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【殺人犯はそこにいる】報道とは、ジャーナリズムとは何か?

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こんばんは。Kadaです。

皆様は、足利事件をご存じですか?

栃木県足利市3人の女児が姿を消し、その後河川敷で遺体となって発見された事件です。犯人が捕まり、事件は解決したかのように思われました。

 

しかし、その犯人は全くの無実。冤罪による逮捕だったのです。

その後も同じ地域で、2人の女児が行方不明、内1人は遺体となって発見されました。

罪のない人を冤罪から救い出し、5人もの女児を手にかけた犯人を暴くため、戦ったジャーナリストがいました。司法の闇に迫るドキュメントです。

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

 

 

 

殺人犯はそこにいる ってどんな本?

5人の少女が姿を消した。群馬と栃木の県境、半径10キロという狭いエリアで。同一犯による連続事件ではないのか?
なぜ「足利事件」だけが“解決済み"なのか?
執念の取材は前代未聞の「冤罪事件」と野放しの「真犯人」、そして司法の闇を炙り出す――。新潮ドキュメント賞日本推理作家協会賞受賞。日本中に衝撃を与え、「調査報道のバイブル」と絶賛された事件ノンフィクション。

amazon内容紹介より

 

足利事件とは、栃木県足利市パチンコ店から3人の女児が連続して行方不明になり、その後河川敷の近くで遺体となって発見された一連の事件です。

この事件はでは、被害者の女児のシャツに残された精液から採取されたDNAが決め手となり、当時幼稚園の送迎バスの運転手だった菅家さんが逮捕されました。

 

足利事件 - Wikipedia

☝詳しくはこちらをどうぞ。

 

しかし、菅家さんが逮捕された後も、栃木県足利市群馬県太田市という隣接する二つの市で、同様にパチンコ店から2人の女児が誘拐される事件が起きたのです。

 

著者の清水氏は、足利事件とその後に起こった2つの事件は同じ犯人によって引き起こされたものではないかとの予想を立てます。

つまり、終身刑を受けた菅家さんは冤罪であり、今も栃木県・群馬県のどこかに5人の女児をさらい、4人を殺害した犯人がのうのうと過ごしているのです。

 

日本のどこにでもあるようなその街で、あなたが住んでいるかもしれない普通の街で、あなたは刑に服することもない「殺人犯」と日々すれ違うことになる。

-p4より

 

清水氏は、「小さな声を聞く」をモットーに遺族・菅家さん・犯人の目撃者・当時の警察などに徹底した聞き込みを行い、みごと菅家さんの冤罪を突き止め、真犯人にたどり着きます。

警察と検察、司法の闇を暴露したノンフィクションです。

 

 

 ずさんなDNA型鑑定による冤罪

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この本を読んで一番ショッキングだった点。それは、市民の守り手であるはずの警察が罪のない一人の人を殺人犯に仕立て上げ、あげくその事実が明るみにでた後も自己保身に走っていたことです。

 

前述のように、足利事件の逮捕のきっかけとなったのは、3人目の被害者である女の子のシャツに付着していた精液でした。

その精液からは、犯人が1000人に1,2人の確立で一致するDNA型『18-30』であること、B型であることが分かりました。

 

警察は、ロリコンで、B型、DNA型『18‐30』を持つ男性を犯人として調査を進め、菅家さんを逮捕します。菅家さんの家からは女児もののアダルトビデオが押収され、菅家さんのDNA型は『18-30』でした。

その後、菅家さんが犯行を自白し、終身刑を言い渡されます。

足利事件は解決したかのように見えました。

 

…しかし、著者の清水氏が独自に調査を進めたところ、なんと当時のDNA型鑑定はあまりに不正確でした。しかも、菅家さんのDNA型は『18-30』ではなく、『18-29』だったというのです(※型番が1つ違うだけで全くの別人になります。)

その上に、犯人の真のDNA型は『18‐24』だということが判明します。

 

そのうえ、菅家さんの家から押収されたアダルトビデオはすべて大人の女性のものであり、女児を対象としたアダルトビデオは一切見つかっていませんでした。警察は菅家さんを犯人に仕立て上げるため、存在しない証拠品をでっち上げたのです。

 

その後、無事に菅家さんは釈放されました。自白は当時の警察によって強要されたものであり、過酷な取り調べが明らかになりました。

 

 

そして、証拠の隠蔽

さあ、『18-24』型を持つ犯人を捜すために警察が動くかと思いきや、警察は一向に捜査を始めません。

しかも菅家さんを逮捕したのは過ちだが、『18-24』型は犯人ではない。DNA型鑑定は正確だったと主張し続けたのです。

 

それもそのはず、日本にはすでに当時の不正確なDNA型鑑定によって逮捕され、死刑が執行された人たちがいるからです。

しかも、死刑が執行されたうちの一人は本書で冤罪の可能性があると指摘されています。

 

犯人の精液が残っている被害者のシャツは、今も警察が保管しています。

それもそのはず、遺族に返却して民間の研究機関でDNA型検査等をすれば、当時のDNA型鑑定が不正確だったことが確定し、冤罪による死刑が明るみに出る可能性があるからです。

 

遺族はいまだに大切な子供のシャツを返して貰っていません。被害者の所持品を遺族に返却しないのは法律違反であるにも関わらず…。

 

 

報道とは何か、ジャーナリズムとは何か

一つの事件を皮切りに、日本の司法を大きく揺るがす真実にたどり着いた清水氏。

しかし、そこにたどり着くまでの道のりは容易ではなく、血もにじむかのような調査が存在していました。

 

周りの記者や警察から、「菅家は犯人なのは揺るがない。」「もう終わった事件を調査しても恥をかくだけだ。」と罵倒されながらも調査を続行したのは、清水氏が報道に対して熱い思いを抱いていたためです。

 

何かの「結果」が見えないと「真実」と認めてもらえないという現実が調査報道にはある。

私自身はそんなことにこだわってはいない。世の為になると信じて何かを伝えればいい。評価は不要。とは思うのだが、それでは”日本”は動かない。

-p181より

 

そもそも報道とは何のために存在するのかー。(中略)

 

謎を追う。事実を求める。現場に通う。人がいる。懸命に話を聞く。被害者の場合もあるだろう。遺族の場合もある。そんな人たちの魂は傷ついている。その感覚は鋭敏だ。報道被害を受けた人ならなおさらだ。行うべきことは、何とかその魂に寄り添って、小さな声を聞き、伝えることなのではないか。

-p450より

 

インターネットが発達した現代では、「マスゴミ」等の言葉が生まれ、TVや新聞の報道を疑うような考え方が浸透してきました。

しかし、足利事件が起こった当時では日本中がニュースで報じたことを信じるしかなく、冤罪になった菅家さんとその家族は大きな被害を受けました。

 

一人の人の人生を狂わせてしまう、報道の持つ力の恐ろしさを感じます。しかし、肝心の司法やマスメディアは古い体質に縛られたままです。

 

だからこそ、私たちが情報に対するリテラシーを持ち、マスメディアの言うことを鵜呑みにせず、正しい事実を知ろうとする目線を持つことが求められていると強く感じます。

 

 

著者の生きざまに感銘を受ける一冊

報道とは小さな声を聞くこと、そして真実を伝えること。

他人に馬鹿にされようとも正義を貫く著者の生きざまに感銘を受けました。

日本中に清水さんのような記者が増えれば、マスメディアの質はどんどん良くなっていくのではと思います。

日本でこんな事件が起きていることに対して無関心じゃいられない。ぜひ皆様に読んでほしい一冊です。

 

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

 

 

 

その他におすすめの本や読みたい本は?

 👇こちらも同じ著者によるノンフィクション。清水氏によって、警察が被害者を見殺しにしたことが明らかになりました。

桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

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